不意に顔を上げたラントに、私は微笑んで言葉を続けた。
「大丈夫!ラントは絶対ロッド様と同じくらい強い騎士になれるよ!私が保証する!
なんたって、味方が誰もいなくなっても、一人で女装して私の部屋に乗り込んでくる度胸の持ち主だもん。もう二度と、ラントは負けないよ!」
「お前、その黒歴史、今持ち出すか…?」
「褒めてるんだよ!」
すると、ラントが、ふっ!と吹き出した。
急に笑いが止まらなくなったかのように肩を震わせるラントに、私は彼の顔を覗き込む。
すると、ラントは瞳の光を取り戻したように私をまっすぐ見つめながら言った。
「あー…、本当にお前は変な奴だな。
落ち込んでいるのが馬鹿らしくなってくる」
いつもの表情に戻ったラントに、私は胸をなでおろす。
…よかった…。
その時、少しの沈黙の後
ラントは、どこか吹っ切れたように穏やかな顔をして言葉を続けた。
「…俺、今まではロッド団長を追いかけることだけを考えてた。でも、今、ここで誓う。俺は、騎士としてお前の盾になる。
この旅の間に、俺は強くなってみせる。お前のこと、一人でも守れるくらいにな。」
…!
ラントの思いがけない言葉に、私は目を見開いた。
…初対面の時から、私に向かって暴言を吐いたり、“ロッド団長の呪いを解けば、お前は用済みだ”みたいなことを言ってたラントが、こんなことを言うなんて…!
感動でつい、言葉を失っているとラントは照れたようにぼそり、と言った。
「…今朝も、“ロッド団長とキスしてみれば”、なんて言って悪かった。もう、急かしたりはしないから。
団長が思い通りに戦えない分、俺が代わりに剣を振るって支えればいい話だしな。」
「!」
ラントの言葉に、私はつい今朝の会話を思い出して、かぁっ!と頬を赤らめた。
ラントは、さらり、と言ったようだが、私はロッド様の顔が頭に浮かんで離れない。
その時、私の動揺に気付いてない様子のラントが、上を見上げながら声をかけた。
「そういや、ガルガルもセーヌに礼を言いたがってたな。」
「え?」



