「ロッド団長…?!何をおっしゃるんです」



ラントが、慌てたように口を開いた。



…ラントが下がって、ロッド様が一人で戦う…?



いくら強いロッド様とはいえ、剣を振るっている途中でさっきのように動けなくなったら一巻の終わりだ。


ラントが、ロッド様に向かって言葉を続けた



「無茶です!団長に倒れられたら、これからどうやってノクトラームを救えばいいんですか!」



「救う前にまずこの城から出ないとだろ?」



「それはそうですけど…!」



すると、ロッド様はくるり、と私の方を振り向いて言った。



「姫さん、頼みがある。」



え…?



私は、ロッド様の碧い瞳を見つめる。


ロッド様は、私から視線を逸らさずに、はっきりとした口調で言った。



「俺は、今から魔法を使う。その魔法は、一発でこの戦いに終止符を打てる代わりに、体にかかる負担も魔力の消費も大きい。

だから俺が魔法をかける間、姫さんには俺の呪いを浄化していて欲しいんだ。」



…!



私が、言葉の意味に気付いて、はっ、とすると、ロッド様は少し躊躇しながらぼそり、と呟いた。



「…手を、繋いでいてくれないか。」



「!」



私は大きく頷いて、ロッド様の手を握った。


ロッド様の瞳が、淡く輝く。


そして、彼はそのまま早口で指示をした。



「…ん、姫さんは俺の背中に隠れてろ。

ラントは姫さんを魔法の衝撃波から守るんだ。」



「!分かりました!」



ラントは魔力を放出して、私の前に光の壁を作り出す。


私は、ぎゅっ!とロッド様の手を握って祈りを込めた。



…お願い…。


ロッド様が魔法をかけ終わるまで、呪いの進行を食い止めて…!



その時、ジャナル大臣の怒号が城に響いた。



「ノクトラームの騎士達よ!

さっさと反逆者達を捕らえろ!」



その合図とともに、騎士達が一斉に迫ってくる。


そして、次の瞬間。

ロッド様は強く瞳を輝かせた。



パァァァ!!



ロッド様の瞳と同じ、碧色の光が辺りを包んでいく。


城の空気がビリビリと震え、窓が振動して大きく音を立てた。



…ぎゅ…!



ロッド様が、ゆっくりと指を絡める。


私は、それに応えるようにして握り返した。



ブワッ!!



その時、激しい突風が辺りを吹き抜けた。

碧色の光が、私たちを中心として波のように広がっていく。


こちらに迫って来ていた騎士達が、一瞬で碧い光にのみこまれた。