ロッド様の体が、微かに強張った。


しかし、だんだん体温が伝わるにつれ、ロッド様はゆっくりと私に体を預けた。



ポゥ…!



ロッド様の碧眼が淡く光る。


ぎゅう…、と抱きしめると、ロッド様を取り巻く光が濃くなり、それに反して胸元の痣は薄くなっていった。


それを見た私は、ほっ、として、ロッド様に声をかけた。



「ロッド様、大丈夫ですか…?」



すると、ロッド様は私の耳元で答える。



「…あぁ…すまない、助かった…。」



低く艶のあるロッド様の声は少し掠れていたが、苦しそうな感じではなかった。



…よかった。


私、役に立てた…。



その時、遠くから魔法でつくられた矢が一直線に飛んできた。


私とロッド様は、さっ、と顔色を変える。



この体勢じゃ、避けられない…!



ぐいっ!



ロッド様は、咄嗟に私を庇うように抱き寄せた。

私は反射的に目を瞑り、ロッド様に体を預ける。



と、次の瞬間だった。



ガキン!!



矢が剣で弾かれたような音が聞こえた。


はっ!として顔を上げると、座り込む私とロッド様の目の前に、剣を構えたラントが立っている。



「ロッド団長、ご無事ですか!」



…!



振り向いたラントの檸檬色の瞳が私たちをとらえる。


赤い短髪が、風になびいた。



ラントが、矢を弾き飛ばしてくれたんだ…!



私は、安堵の息を漏らしながら口を開く。



「ラント、ありがとう…!」



「おぅ!お前もロッド団長のついでに守ってやるから、じっとしてろ。」



力強くそう答えたラントに、私は笑顔で頷いた。


その時、ロッド様がゆっくりと立ち上がる。


ラントの隣に並んだロッド様は、何かを考え込むように黙り込んだ。


ラントは、こちらに刃を向けている騎士達をまっすぐ見つめながらロッド様に言う。



「ロッド団長。やはり気を遣いながら戦うのは骨が折れます。

団長はセーヌの近くで体を休めてください。後は俺が一人で請け負いますから。」







……二人が倒していったとはいえ、ここにはまだ、ざっと二十人ほどの騎士達がいる。


この人数をラント一人で相手するなんて、可能なの…?



私が不安げにラントを見上げると、彼は至って真剣な瞳をしている。


本気でそう思っているようだ。



…ロッド様は、まだ体が本調子ではない。


ラントの強さは、この目で見た。


ここでラントに頼るのも一つの手だ。


でも………!



その時、ロッド様の凜とした声が響いた。



「ラント、大丈夫だ。お前は下がって姫さんを守ってくれ。

後は俺に任せろ。一瞬でケリをつけてやる」