「あの…これからどうするおつもりなんですか?」
私は、おずおずと彼にそう尋ねた。
すると、彼は腰に下げた剣を見つめて答える。
「騎士長はラントに引き継いだからな。
俺はノクトラームを出て、世界を回ろうと思ってる。」
「…旅に出る…ということですか?」
「まぁ、そうだな。」
小さく答えたロッド様の言葉を反芻していると、彼が私に尋ねた。
「あんたは、どうするんだ?
城を出るんだろう?」
…!
私は、言葉に詰まった。
…ドナータルーズに帰る?
それは、一番無難な選択肢なんだと思う。
平和な毎日が約束されて、住むところも、食べるものも安定する。
顔なじみに囲まれて、楽しく過ごせる。
…だけど、心には何かが引っかかるような気がした。
いや、“何か”ではない。
その正体に、私は気づいている。
…ドナータルーズに戻ったら、二度とロッド様と会えない。
私は、彼の問いかけに何も答えることが出来なかった。
「…故郷には帰らないのか?」
ロッド様に言われてしまった。
私は「…んー。」と言葉を濁す。
あぁ、何を言っているんだ私は。
ロッド様が旅に出る前に、ちゃんと話をしておこうと思ったのに。
自分のことすら上手く喋れないなんて。
私が悶々と未来を考えていると、ロッド様がさらり、と言った。
「故郷に戻らないなら、俺の嫁にでもなるか?」
……………。
………。
…。
「え?」
「嫌か?」
「いっ!嫌じゃないです…!!」



