一呼吸おいた後、ロッド様は言葉を続ける。



「俺の手を取れば、姫さんも反逆者となる。

だけどその代わり、俺は命をかけて、
あんたを王子の元に連れて行くと誓う。」







ロッド様は、すっ、と私に手を伸ばした。

彼を見上げた私に、ロッド様は言葉を続ける



「…俺の手を取る気はあるか?姫さん。」



…!



これは、“契約”だ。


ロッド様は、私を護衛しながら王子様の元まで連れて行き

私はロッド様の呪いを浄化することで彼を支える。


差し出された手を取らない選択肢など、もう私の中にはなかった。



「もちろんです。

私は、ロッド様と共に行きます。」



繋がった手から、ロッド様の体温が伝わってくる。

ポゥッ、とロッド様の瞳が淡く輝いた。


私が触れたことで、少しずつロッド様の呪いが解けていっているようだ。


その時、ロッド様は、ぱっ、と私の手を離した。



え…?



きょとん、として見上げると、ロッド様は
ばさり、と制服の上着を脱いで、私の肩にかけた。


そして、軽く視線を逸らしながら呟く。



「服は後で用意するから、今はこれで我慢してくれ。

…目のやり場に困る。」



「!」



ぼそり、と言われ、私は、はっ!として自分を見た。


何百年も使われていないと思われる隠し通路を通ってきたせいで、服はホコリとススで黒い上に、無理やりドレスを破って逃げてきたからボロボロだ。


肩や足の露出を全く気にしていなかった自分が、急に恥ずかしくなる。



「す、すみません…!」



「いや、姫さんがそんな格好になったのは俺のせいだ。

…あまり見ていないから、気にするな。」



ロッド様は私を見ずにそう答えると、きゅっと私の手を取った。

そして、ゆっくり歩き出す。



「とりあえず、地下牢を出るぞ。

今ごろ、ラントが地上で暴れて騎士を引きつけているだろうから、動くなら今だ。」



私は、きゅっ、とロッド様の手を握り返して頷いた。


私達は、呪符の貼られた不気味な道を進む。


半歩前を歩くロッド様の背中は大きくて、骨角ばった手は、力を加減するように優しく私の手を握っている。



…体の調子はどうなのかな?

楽になっているならいいけど…。



整った横顔をちらちらと見つめていると、ロッド様は私の視線から心を察したように、前を見つめながら口を開いた。



「心配しなくても大丈夫だ。だいぶ体が軽くなった。

…全ての呪いが解けなくても、戦えるくらいの力はある。」



…!



私は、ほっ、として胸をなでおろす。


ロッド様の体調が回復しているうちに、地下牢からうまく逃げ出せればいいけど…



と、そう思った次の瞬間だった。



「イタゾ…!反逆者ダ!」



「「!!」」