顔を顰める彼に、僕は笑う。



その時、僕はふとあることに気がついて彼に尋ねた。



「そのネックレス…。

もしかして、クロウのか…?」



僕の言葉に、彼は、ぴくり、と反応した。


ラントくんの首元には、魔法石のついていない銀色のネックレスが光っている。


彼は、そのネックレスに手を当てながら答えた。



「…あぁ。ジャナルの城から出る時に、クロウの城が崩れ落ちるのが見えたんだ。

…これだけでも、ジャナルの城から取ってきてやろうと思ってさ。」



…そうか。


クロウは、リディナ姫や城の使用人の思い出の込もった城と共に、生涯を終えたんだ。



「クロウはジャナルのせいで…いや、ノクトラームのせいで人生を狂わされたんだ。

僕は、もう二度と、彼のようなつらい思いをする人がいない国を造りたい。」



すると、彼は僕をじっ、と見つめながら口を開いた。



「あんた、いい王になれると思います。

俺、命をかけて護衛につきますから。」



…!



僕は、ついその言葉に目を見開く。



「珍しいね、ラント君が僕に敬語を使うなんて。

それに、僕の護衛なんて…どういう心境の変化かな?」


すると、彼は、さっ、と僕から視線を逸らして呟いた。



「…別に。

ロッド団長の後を継ぐ者として、覚悟を決めようかなって思っただけです。」



その言葉に、僕は小さく肩を揺らした。


赤髪の青年は、出会った時よりもたくましく、頼れる男に見えた。


どこか照れたように頭を掻いた彼は、話題を逸らすように口を開く。



「あの二人、今頃出会えましたかね。」



…!


僕は、小さく微笑んで窓の外を見た。



「…きっと、あの二人なら上手くいくよ。」



澄み切った青空が、どこまでも続いているのが見える。


僕は、どこかすっきりした気持ちでその景色を眺めていたのだった。



《アルトラside*終》