私が小さく聞き返すと、ロッド様は荒く呼吸をしながら口を開いた。



「俺は今まで…呪いを浄化するために姫さんを抱き寄せたし…キスもしてきた…。

姫さんは…善意で俺に付き合ってくれて…俺はそんなあんたの気持ちを汚してはいけないと思ってた…。」



ロッド様は、小さく続ける。



「…だけど、一度だけ…俺は“弱ったフリ”
をしたことがあるんだ…。」



「えっ…?」



どくん、と心臓が鳴った。


思いもよらぬ言葉に、声が出ない。



「…俺は…呪いを浄化する以上に…触れた先から、俺の想いが伝わればいいと…

そう…思ったんだ…。」



途切れ途切れの言葉は、私の心の奥深くまで入り込んだ。


無意識のうちに、涙が頬をつたう。



「…そんなの……ずるいです……」



「だよな…、悪かった…。」



「“悪かった”、じゃすみません…!

私は、貴方が手を伸ばしてくれた時しか、触れられなかったのに……」



私の言葉に、ロッド様が小さく目を見開いた。


その時、私は、ぞくりと体が震える。


私の指を絡めている彼の指が、どんどん体温を無くしていくからだ。


私が小さく呼吸をした瞬間、私の視界に
“あるもの”が映る。


それは、ロッド様が私にくれた、シロツメクサの花冠だった。


しかし、それは以前までの“それ”と違う。


花はしおれ、葉はどんどん枯れていく。



…!



この花冠が枯れるのは、ロッド様の魔力が失われている時。


ロッド様の魔力が尽きる…ってこと…?



「…だめ…だめです、ロッド様!

しっかりしてください!!」