反逆の騎士長様




…!



ロッド様の言葉に、私は、はっ!とする。



まさか、地面に衝突する直前にヴェルの風の魔法を使って、空気抵抗を利用して衝撃を和らげたの…?


残りの魔力、全てを使って…?



ロッド様は、治癒魔法を使う魔力が残っていない。


私を助けるために、自ら崩落に巻き込まれて魔法を使ったから。



ぞくり、と体が震える。


私は、彼の体を強く抱きしめた。



「…治って、治って、治って…

…お願い………!」



いくら体に力を込めても、彼の傷は塞がらない。


涙が溢れる。



「…“セーヌ”…」



その時、低く艶のある声が私を呼んだ。


それは、いつもの聞き慣れたものではない。


ぴくり、と反応して、私が彼のシャツから顔を上げた瞬間だった。



…ぐいっ!



彼が、私に力の入らない腕を預けるようにしながら私を引き寄せた。



「…ん…っ……!」



言葉もなく、唇を塞がれる。



彼の呪いはもう解けているのに。

苦しみも痛みも、もう口付けでは癒されないはずなのに。


口付けはだんだん深くなっていく。


契約が解消された今、突き動かされるような感情に抗える理性などなかった。



私の瞳から一筋の涙が溢れた瞬間、ロッド様が、私を離した。

離れた唇の隙間から、彼の熱い息が漏れる。



「…これで、もう痛くない…」



…!



「…嘘、つかないでください……。」



震える声に、ロッド様が微かに表情を緩めた。


“そんな顔をするな”、というような彼の視線は、どこまでも優しい。



「…姫さん、聞いてくれ…

俺は…あんたに謝らなきゃいけないことがあるんだ…」



え…?