俺が胸の傷に手を当てながら走りだろうとした、その時だった。
目の前の床が、音を立てて下へと崩れ始めた。
視界に映るのは、咄嗟のことに反応が遅れた姫さんの姿。
彼女の体が、床の沈み込みに巻き込まれる。
「っ!!」
言葉にならない悲鳴が聞こえた気がした。
「姫さん!!!」
俺は、剣を捨てて走り出した。
無意識のうちに体が動く。
「っ…!」
ダン!と床を蹴って、崩落に巻き込まれていく姫さんの体を抱き止めた。
体が宙に浮き、ぐらり、と視界が反転する。
「ロッドーっ!!!!」
アルトラの叫び声が聞こえた。
しかし、その声はだんだん遠ざかっていく。
体が、重力に引き寄せられるようにして落ちていった。
ヒュオォォォッ!!
風圧が、俺と姫さんの体に襲いかかった。
腕の中から、意識の途絶えた感覚がする。
…くそ!
このまま落ちたら二人とも命はない。
だが、今の体では王達のようにこの崩落を魔法で食い止めるなんて技は無理だ。
魔力も、もうほとんど残っていない。
…どうする!
せめて、落下の衝撃を和らげられたら。
何か、何かないのか。
わずかな魔力でも使える、この状況を一変させる魔法は……!
その時、俺の脳裏にある考えがよぎった。
…迷っている暇はない。
落ちる所まで落ち、体が地面に墜落するその瞬間。
俺は、ありったけの魔力を込めて、ある
“魔法”をかけた。
《ロッドside*終》



