彼女の声を聞いた瞬間、俺は胸の痛みを忘れた。
勝利の女神が、俺の前に現れたんだ。
パァァァッ!!!
目がくらむほどの光が玉座に溢れた。
パキン!と、ジャナルの魔法陣がひび割れる。
「!!」
ジャナルが目を見開いた瞬間。
魔力に耐えきれなくなった奴の杖が、バキ!!という大きな音と共に、真っ二つに折れた。
ジャナルの前に広がっていた魔法陣が砕け散る。
「アルトラ!今だ!!」
俺の叫び声と共に、剣を持ったアルトラが、待ってましたと言わんばかりの勢いで飛び出した。
ふらり、とよろめくジャナルに向かって、アルトラが剣を振り上げる。
ザシュッ!!
剣は、ジャナルの体を切り裂いた。
その瞬間、玉座に流れていた闇の魔力が、ジャナルの体を包み込んだ。
まるで闇に帰るように、奴の体は黒い雲に飲み込まれながら消えていく。
!
…やった…か…?!
その場にいた全員が固唾を飲んでジャナルの消えゆく様を見つめた
次の瞬間だった。
グラリ!!
突然、玉座が大きく揺れた。
いや、玉座だけではない。
城全体が震えて、一気に朽ちていくようだ。
この城に流れる時間だけが速く過ぎ去っていく。
壁はボロボロ、天井のシャンデリアは光を消してガタガタと揺れていた。
「ジャナルの魔力が完全に消えたんだ!
城にかけられた魔法が解ける!」
アルトラが、切迫した表情でそう叫んだ。
王と王妃が、魔力で必死に崩落を食い止めているようだ。
だが、衰弱しきっている彼らの力では、ほんの数分逃げる時間を引き延ばすことで精一杯だろう。
城が、崩れる…!
その時、いきなり大理石の床にヒビが入った。
ビキビキビキ…ッ!
目で追えないほどの速さで、亀裂が広がる。
…!
まさか、床が抜ける…?!



