足を踏み出す度に呪いが体の奥で脈打った。


俺は、ジャナルを真っ直ぐ捉え、奴に向かって剣を突き出す。


しかしジャナルは、ばっ!と身を翻して攻撃を避けた。



…逃がすか…!



太刀を躱された俺は、勢いをそのままに、奴に向かって蹴りを入れる。



ドッ…!!



「ぐ…!」



ジャナルの腹部に直撃した攻撃に、奴は低く呻き声を上げた。


その時、アルトラがよろめいたジャナルに向かって剣を振り上げる。



ガキン!!



咄嗟にアルトラの攻撃を杖で受け止めたジャナルは、背中がガラ空きだ。






今なら、行ける…!



俺は一気に魔力を放出して、奴の背中へ腕を突き出した。


玉座に三人の魔力が入り混じり、窓がガタガタと音を立てる。


と、次の瞬間、体に激痛が走った。



「っ!!」



思わず顔を歪めたその時、前に突き出していた自分の腕が目に入った。

青い騎士の制服の袖から見える腕に、呪いの痣が広がっている。



…!


ここまで、侵食が進んでいるのか…?!



一瞬、姫さんの顔が頭をよぎった。



…城で魔力を奪う魔法を使った時は、姫さんが俺の呪いを浄化してくれていた。


だが、今、ここに彼女はいない。


ここまで呪いが広かった体で、どこまでジャナルの強大な魔力を奪える…?



一瞬の俺の迷いを突いたように、ジャナルがさっ!と空中へ飛び上がった。


そして、奴はそのまま、見上げる俺とアルトラに向かって杖を突き出す。


ぐわん、と玉座を包む空気が歪んだ。


ジャナルが、カッ!と目を見開いて俺たちに向かって鋭い刃を放出する。


上空からの攻撃に、逃げる場所も、隠れる柱もない。


防御の魔法も、間に合わない。



「アルトラ!!」



躊躇など、無かった。


ここで、騎士長として取るべき行動は、一つだったからだ。


身体中に、呪いとは別の痛みが走った。



《ロッドside*終》