ジャナルは、杖をぶん!と振って空中へ魔法陣を描き出した。


次の瞬間、魔法陣から俺たちに向かって焼けつくような炎が噴き出す。



「っ!!」



ジリッ!と焦げたマントを脱ぎ棄て、俺は魔力を放出する。



パァッ!



間一髪のところで防御した俺は、柱に隠れて難を逃れたアルトラに向かって指示を出した。



「アルトラ!トドメはお前に任せる。

俺が奴の魔力を奪った隙に、仕留めろ…!」



「!あぁ!」



アルトラは、魔力で辺りに霧を放出する。


ジャナルの炎の力が弱まった隙を見て、俺は奴に向かって腕を突き出した。



…敵の魔力を奪う魔法は、ノクトラームの城で成功した。


ジャナルをうまく魔力の届く範囲内に捉えることが出来たら、きっと勝負がつくのは一瞬だ。



俺が瞳を輝かせ、腕に力を込めた、次の瞬間だった。


突然、ジャナルが俺の方へ顔を向けた。


ニヤリ、と不敵に微笑んだ奴は、まるで勝利を確信したかのように藍色の瞳を輝かせる。



ドクン…!



ジャナルの瞳に、俺の姿が映ったその時。


突然、心臓が握り潰されたように激しく痛み始める。



「かは……っ!」



呼吸が一瞬止まり、高まっていた魔力が消え失せた。



「ロッド!!」



アルトラの緊迫した声が耳に届く。



…まさか、ジャナルは俺の呪いの度合いを自由に操ることが出来るのか…?


“いつでもお前を殺せるぞ”と言われた気がした。



…死ぬのを恐れていて、何が出来る。


やっと、ここまで来たんだ。


俺の命が消えたとしても、必ず、“次の一手”
に繋げてみせる…!



俺は、言うことのきかない体を精神力だけで立ち上がらせ、剣を片手にジャナルへと駆け出した。