アルトラは驚いて目を見開いたが、すぐに俺の言葉を聞いて全てを察したように魔法の壁を作り出した。


俺はそれを確認すると、ばっ!と鎧の騎士達に向かって腕を突き出す。



パァッ!!



俺が魔力を放出した瞬間、鎧の騎士達の瞳の色が消えていく。



ガシャンガシャン!!



次々と、操り人形の糸が切れたようにその場に倒れ出す鎧達。

通路から落ちて地面に墜落した鎧が、大きな音を立てた。


荒れ地の風が、俺の魔力に共鳴するように轟々と城に吹き荒れる。


まるで、幻の城が竜巻の中心にいるようだ。


粗方魔力を奪ったところで、俺は、すっ、と魔力を消した。



「……っ。」



力を抜いた瞬間、体が鉛のように重くなる。


体の内側から、どろり、とした不快感が溢れてくるようだ。


思わずその場に片膝をつくと、剣を腰に戻したアルトラが、血相を変えて駆け寄ってきた。



「ロッド!!」



声とともに、目の前に綺麗な翠色の瞳が見える。


荒く呼吸をしながらアルトラの方へと顔を上げて尋ねる。



「…アルトラ、大丈夫か…?」



「それはこっちのセリフだ!

僕はお前のお陰で助かったが………」



その時、アルトラが俺の首元を見て言葉を途切れさせる。


彼の翠色の瞳が動揺で揺らめいた。



「お前、痣が……!」



アルトラの言葉に自身の胸元へと目をやると、体のだるさに比例するように呪いの痣が広がってきていた。



…くそ…

本当にこの体は役に立たない…!



思わず悔しさに歯をくいしばる。


まだ動けるとはいえ、少し魔力を多めに放出しただけでコレだ。


俺は、アルトラに向かって口を開いた。



「アルトラ。もし、俺がこの先体の自由がきかなくなったら、迷わず先に行け。

俺は、命が尽きるまで、騎士長として王子のお前を護衛する。」



「え…っ!」



アルトラが、動揺したように声を上げた。


姫さんがいない今、俺の体は呪いに蝕まれていくだけだ。


いつ動けなくなるかなんて分からない。


アルトラを俺の巻き添えにするわけにはいかない…!