「…っ。」



と、その時、ラントの体がぐらり、とよろめいた。


小さな声をあげて、ラントは床へ片膝をつく。



「ラント!」



私は、思わず彼に駆け寄った。


素早くしゃがみこんで彼の方を見ると、ラントの左肩の青の制服が血で赤く染まっている。


ぞくり、と体が震えた。


ラントは、荒く呼吸をしている。



…私は治せるのは、呪いの傷だけ。


致命傷ではないものの、出血を止めなければ命に関わるかもしれない。


騎士として、剣が振れなくなったら、ラントは終わりだ。



と、その時だった。



ガシャ、ガシャ、ガシャ!




「「「!」」」



その場にいた全員が顔を上げた。


城の扉の向こうから、鋼の足音が聞こえてくる。



…!



まさか、鎧の騎士達が迫って来ているの?!



体の温度が一気に下がった瞬間、城の扉が大きく音を立てた。



ドォン!ドォン!



どうやら、外側から突き破ろうとしているようだ。


瞬時に、頭の中にロッド様とアルの姿が浮かぶ。



…武器庫の中にあった鎧は、数えきれないほどだった。


外で二人が戦ってくれているとしても、手に負える数は限られる。



私は、ぱっ、とラントを見た。


今の彼に、大量の鎧の騎士を相手にする余裕はない。



…まずい…!



と、私の胸に焦りが込み上げた

次の瞬間だった。



ドガァァン!!



突然、城の扉が突き破られ、無数の銀色の集団が現れた。


スコー、スコー、と気味の悪い呼吸音を響かせながら、一歩一歩城内へと踏み込んでくる。


中に人は入っていないが、鎧の瞳は赤く光っていた。



ぞくり!



体が恐怖で強張った瞬間、先頭の鎧の頭が吹っ飛んだ。



カシャァン!!



勢いよく床に転がる鎧の頭。


そして、その奥から青と白のマントを羽織った青年達が飛び出した。