パァッ!
檸檬色の瞳が、クロウを映す。
そして、間髪入れずに、俺はクロウに向かって腕を突き出した。
ゴウッ!!
その瞬間、俺の突き出した腕から突風が吹き、クロウの体が壁に向かって飛んでいく。
ダン!!
「…ぐ…っ!」
クロウが、低くうめき声をあげた。
…樹海でロッド様に教えてもらった“ヴェルの使えない攻撃魔法”が役に立つとはな…!
俺は、一気に畳み掛けるように壁に体を打ち付けられたクロウに向かって、持っていた剣を投げた。
ヒュン!
剣は、一直線にクロウの元へ飛んで行く。
ドッ!!
クロウは、ばっ!と体を動かし、剣の軌跡から外れる。
勢いよく壁に突き刺さった剣をちらりと見たクロウは、ひどく冷たい視線で俺へと視線を移した。
「剣を手放すなんて、どういうつもりだ?
今の一手で勝負が決まるとでも思ったか」
冷ややかな声が辺りに響いた。
クロウの靴底が、ジャリ…、と音を立てる。
鮮明に聞こえた音に、自分の中の全ての感覚が研ぎ澄まされていることを実感した。
…さぁ、来い
この状況に、乗ってこい…!
クロウは、一気に魔力を解放して床を蹴る。
漆黒のマントがばさり、とはためいた。
一瞬にして目の前に来たクロウに、俺は姿勢を低める。
クロウは、低く冷たい声で言い放った。
「武器を持たないお前に勝ち目はない。
…ここまで粘ったことを褒めてやる…!」
「!」
クロウは、顔色一つ変えずに俺に剣を向けた。
奴の剣は、まっすぐに俺を捉える。
逃げ場はない。
「ラントーっ!!!」
セーヌの緊迫した声が耳に届いた。
《ラントside*終》



