アルが、無意識にぽつり、と呟いた。
ロッド様とラントも、言葉を失って城を見つめている。
そう。
それは紛れもなく、かつて私達が門を抜けて来たノクトラーム城だった。
どうしてここに…?
ここは、ノクトラームの国外れ。
中心部にあるはずの城が、ここにあるはずなんてないのに…
すると、ロッド様が眉を寄せながら呟いた。
「…体の中の呪いが、ジャナルの魔力に反応している。
あれはきっと、ジャナルが作り出した“マガイモノ”だ。」
“マガイモノ”…?
全て、魔力で作られた城ってこと…?
ぞくり、と体が震えた。
今から、全てがジャナル大臣によって作られた、いわば敵の“要塞”に向かうんだ。
「…怖いか?」
…!
ロッド様が、小さく私に尋ねた。
彼は、真っ直ぐ城を見据えている。
私は、手のひらを握りしめて彼に答えた。
「いいえ、むしろ、早く乗り込みたいです。
私の力でジャナル大臣の魔法陣を浄化して、必ず王様達を救い出してみせます。」
「…心配する必要は無かったな。
それでこそ、姫さんだ。」
私は、自分の言葉で覚悟を決める。
…王達の自由を奪っている呪いを解いて、彼らを救い出すこと…。
それが、私がここに来た意味だ。
ロッド様が、ここまで私を守ってきてくれた意味だ。
…期待を裏切るようなことはしない…!
ざわざわと風が吹く。
砂埃が舞い上がり、ラントが小さく目を細めた。
「…なんか、嫌な胸騒ぎがするんだよな。」
ぼそり、と呟かれたラントの言葉に、私はごくり、と喉を鳴らしたのだった。



