ロッド様の言葉に、ラントが腕組みをしながら答える。
「クロウが出入りしてたんじゃないですか?
城の中からじゃなく、荒れ地側から来て。」
…確かに、宝石がないと城内から入ることは不可能だ。
だから、今まで私達が通ってきた石造りの階段は、誰も通った形跡が無かった。
ロッド様が部屋の奥を照らすと、そこには先に伸びる道がある。
おそらく、あの道の先にあるのは“荒れ地”。
…でも、もしここに来ていたのがクロウなら、武器庫も城と同じように綺麗に掃除すると思うんだけどな…?
錆び付いたまま放っておくなんて、城を大切にしているクロウにしては、ずさんだ。
どこか違和感は感じていたが、私達はそのことに深く追求することはしなかった。
武器庫を出て、さらに奥へと進むと、やがて目の前に新たな階段が見えてきた。
ロッド様がランプで足元を照らしながら上へと向かう。
コツ…コツ…、と階段を上るにつれて、緊張感が増していく。
「また扉か…。これには鍵がかかっていないようだが…。」
ロッド様が、足を止めてそう呟いた。
階段の終わりには、取っ手のついた木製の扉が見える。
ロッド様は、ふっ、とランプの明かりを吹き消した。
そして、それを足元に置くと、すぅ、と息を吸って扉に手をかける。
…ギィ…!
木の軋む音とともに、石造りの通路に外の光が差し込んだ。
目の前に広がる世界が、だんだんと露わになる。
…!
私達は扉の向こうへと一歩足を踏み出した。
と、次の瞬間、その先の光景に目を疑う。
“荒れ地”という名の通り、一面に草一本生えない大地が広がっている。
そして、その大地を越えた先にそびえ立つのは見覚えのある“城”だった。
「……“ノクトラーム城”…?」



