「みんな、準備は良い?」
午前八時。
城の窓から見える外は、相変わらずの曇天。
静かな廊下に、アルの声が響く。
その声に頷いた私達は、全員揃って一歩を踏み出した。
…コツ…
女神像の前にぽっかりと開いた穴。
その先に伸びる地下への階段。
先頭を歩くロッド様は、昨夜城内で見つけた弓張り用のランプを手にしながら進む。
石造りの階段に足音が響く度に、音が反響して奥へ奥へと誘い込まれているようだ。
その時、ラントと私を挟んで最後尾を歩いていたアルが、壁を見ながら口を開いた。
「…相当古い通路だね。
だいぶ人が足を踏み入れていないようだ。」
確かに、そこら中に蜘蛛の巣が張り巡らされていて、空気がどこか黴臭い。
ジメジメとした空気の肌触りはとても良いとは言えなかった。
するとその時、ロッド様がふと足を止める。
「…扉か。」
ロッド様の声に前方を見ると、階段の終わりの先に、錆び付いた鉄製の大きな扉が見えた。
「まさかここ、“地下牢”なんですかね?」
「女神の導く先が“地下牢”なんて考えたくないがな。」
ラントの言葉にそう眉を寄せて言ったロッド様は、最後の階段を下りると真っ直ぐ鉄の扉の前に立った。
…ギッ
ロッド様が扉に手をかけると、低い音が辺りに響いた。
「…やはり、鍵がかかっているな。」
「まさか、ここまで来て足止めですか…?」
私が尋ねると、ロッド様は小さく呼吸をして目を細めた。
「いや、この際“強行突破”だ。
運良く扉は錆び付いてるみたいだしな。」
え?
すると言い終わるや否や、ロッド様は手にしていたランプを床に置いて、足で扉の強度を測り始める。
そして、足元を確認しながら階段ギリギリまで戻って扉から距離を取った。
と、次の瞬間。
ロッド様は強く地面を蹴って、反動を利用して扉に向かって蹴り込んだ。
ドガッ!!
「「「!!」」」
大きな音が耳に届いた、扉が外れて奥に倒れる。
ドォン!!
扉が蹴破られる音が辺りに響き渡った。
目を見開く私達に、ロッド様は床に置いていたランプを手にして声をかけた。
「ん。進むぞ。」