私が声をかけると、女神像の前に立っていたラントは叫び越えを上げて飛び上がった。
「なっ、なんだよ、セーヌかよ!
急に話しかけんな…!びっくりすんだろ!」
「ご、ごめんね。
ラント、こんなところで何してるの?」
すると、ラントは女神像を見つめながら私に答えた。
「クロウの話を聞いて、女神像が気になってな。
ついさっき、見に来たところだ。」
…!
やっぱり、考えることは同じだよね。
ヒントが“女神像”ってことしかないんだもの。
私は、ラントとともに穏やかな顔をした女神像を見つめる。
ラントは、腕組みをしながら口を開いた。
「女神像の周りの壁を叩いたりして調べたんだが、奥に空洞がありそうな音はしなかったし…
隠し通路と女神像がどう繋がっているのか、見当がつかねーんだ。」
「…確かに、伝承の謎を解かないと先には進めないかもね。」
すると、ラントがふと思い出したように私に尋ねた。
「そういや、お前、アルトラ王子と書庫に行ったんだろ?
てっきり一緒にいるんだと思ってた。何も分からなかったのか?」
「えっ?!」
私は、思わず大きな声を上げた。
平然としているラントに、私は答える。
「…アルは何か分かったみたいだったけど…ちょっと色々あって。」
「ふーん。」
ラントは、さほど興味がないようにそう答えると、女神像をじろじろと眺めながら呟いた。
「…特に変わったところはないしな…。
翡翠の瞳以外は、全身灰色のただの像だし」
“翡翠の瞳”……
私は、ラントの言葉を聞いて女神像を見上げた。
片目に輝く翡翠色の石は、キラキラと私とラントを映している。
と、その時、私はふと頭の中に何かが引っかかるような違和感を覚えた。
あれ…?
私、この瞳、どこかで見たことがあるかもしれない。
瞳…というより、この翡翠の色…
どこかで……………



