大臣の言葉に、騎士達は一斉に武器を片手に部屋へと入ってくる。



っ!

攻撃される…?!



ラントは、大声で騎士達に叫ぶ。



「ブルーノ、ラミアン!目ぇ覚ませ!

本気でハゲの命令を聞くつもりか?!」



ラントの呼びかけにも、彼らの反応はない。



…まさか、声が聞こえてないの…?

本当に操られてるんだ…!!



ラントは素手で構え、騎士達に鋭い視線を向ける。

私は、そんなラントに向かって早口で尋ねた



「ねぇ、この部屋に他の出口はないの?!」



「知らねーよ!

俺は王族の住む城の上階とは無縁だからな」



…!


そんな…!

この人、本当に逃げる時のことを何も考えないでここに来たんだ…!



私は、急いで部屋を見渡す。



…ここは最上階。


窓から飛び降りるなんてしたら、騎士長様を助けるどころではなくなる。


ベランダもないし、他の部屋へ通じる扉もない。

唯一の出口は、操られた騎士達によって塞がれている。



…一体、どうすれば…!



その時、“あるもの”が私の目に止まった。



…!



私は、ラントに向かって尋ねる。



「ねぇ、この城に煙突はある?!」



「あ?!煙突?ねぇよ、たぶん!

少なくとも、サンタが入って来たのは見たことねぇ!」



その時、騎士の一人が私たちに向かって剣を振り上げた。


ラントは、私の座っていた椅子を持ち上げ、剣を受け止める。



バキッ!!



木の折れる音が聞こえたと思った瞬間

斬られた椅子の脚を持ったラントが、流れるような動作で襲いかかってきた騎士の腹を思いっきり突いた。



「ぐはっ!」



騎士は、うめき声を上げて床へと倒れこむ。


私は、その隙に暖炉へと駆け寄って中を覗き込んだ。



「ラント!煙突がない!

これじゃあ、暖炉を焚いたら、部屋中が煙だらけになるわ!」



「だから何だよ?!今、そんなこと言ってる場合じゃねーだろ!」



ラントは、必死で複数の騎士達を椅子の脚で相手しながら私にそう叫んだ。


私は、暖炉の下を覗き込む。



「つまり、これは暖炉じゃないってことよ!

城には、“隠し通路”があるもんでしょ!」



「!」