本の文字を目で追っていく。
花言葉の欄に並ぶ単語。
私はそれを読んだ瞬間、目を見開いた。
“私のものになって”
…!
薄くなったインクで綴られた八文字は、私の心を震わせた。
…ロッド様は、この意味を知らない。
深い意味なんてないのは分かってる。
しかし、私の頭は碧眼の彼でいっぱいになった。
「…セーヌさん?」
「!」
耳に届いた声に、びくりと反応する。
ばっ!と声の方を向くと、不思議そうな顔をしたアルが奥の本棚から歩いてくるのが見えた。
「どうしたの?
何か面白い本でもあった?」
「い、いや。特には…。」
私はアルに答えながら、手に取っていた本を静かに戻す。
アルに隠す必要なんてないのに、私はその場を繕うように本棚に背を向けた。
アルは、私の目を少しだけ見つめ、すっ、と一冊の本を私に見せながら口を開いた。
「やっと解読できたよ。
クロウの言っていた言葉の謎は、だいたい解けた。」
「えっ!本当…?!」
アルは、私の言葉に微笑みながら頷く。
「どうやらこの城には、ある“カラクリ”が仕掛けられてるみたいなんだ。」
“カラクリ”…?
その時、アルが私との距離を縮めた。
アルの手が、優しく私の手を取る。
「…!アル…?」
「行こうか。確かめたいことがあるんだ。」
私は、アルに手を引かれるまま書庫を出た。
コツコツ、と廊下を進むと、静かな城に灯るランプの炎が私たちの影を揺らす。
「アル。カラクリって、どういうこと?」
「隠し通路に続く鍵は、やっぱりクロウの残した伝承がヒントになってたんだよ。」
アルは、廊下を進みながら続ける。
「“女神の瞳に輝き戻りし時、光への道開かれん”という一節の通り、きっと城にある“女神像”が何かのヒントになってるんだ。」
“女神像”って…
この城に来た時にみんなで見た、あの“片目の女神像”…?



