「それで、お城の中に怪しいところはなかったんですか?」



午後七時。

窓の外は真っ暗だ。


厚い雲に覆われているせいで、月の光も届かない。


広々としたダイニングで食事を取りながらそう尋ねた私に、ロッド様はフォークを手にしながら答えた。



「あぁ。どこも至って普通で、特に目のつく所はなかった。

外に通じる扉は全て庭に出るだけのようだしな。」



…やっぱり、そう簡単には見つからないよね。



すると、アルが私とラントを見ながら口を開いた。



「こうなったら、クロウの言っていた城に伝わる伝承の謎を解くしかないようだね。」



「うん。確かに、そう…………」




私は、アルの言葉に頷きながら、はた、と止まった。



「え…?

ど、どうしてクロウとの会話を知っているの?」



するとアルは、私の言葉に「廊下で聞いてたからね」と笑う。



…!


聞いていたんだ…!

全然気がつかなかった。



ラントも果実にかじりつきながら、驚いたような顔をしている。


その時、アルが私に向かって言葉を続けた。



「セーヌさん。良かったら夕食の後、城の書庫に行ってみない?

伝承や、この城にまつわる歴史の資料があるかもしれない。」







私は、アルの言葉に笑顔で頷いた。



…確かに、アルの言う通り城の書庫になら隠し通路の場所を記す何かがあるかもしれない。


クロウの言っていたことも気になる。



アルは、優しげな瞳を私に向けると、紙ナプキンで口を拭きながら席を立った。



「じゃあ、準備が出来たら部屋に迎えに行くね。」



…ガチャン…!



アルがそう言った瞬間、目の前に座っていたロッド様が手からグラスを滑らせた。


ロッド様の方へ視線を向けると、彼は少し動揺しているようにまつげを伏せていた。



「どうしたんですか、ロッド様?」



「…いや、何でもない。」