まつ毛を伏せたクロウに、ラントが尋ねる。



「不老不死…ってことは、永遠の二十歳ってことか?」



「…そんな輝かしいもんじゃない。

奴に命を握られた、ただの操り人形だ。」



低くそう答えたクロウに私は尋ねる。



「無理矢理、呪いをかけられたの…?」



すると、クロウは険しい顔をして首を横に振った。



「…いや。

俺は自分からジャナルの呪いを受けたんだ」



…?


どういうこと…?



クロウは、私を見つめて少し気まずそうに口を開いた。



「あんた、手紙を見たと言ったな。それなら察しはついているだろうが…

俺はこの国の姫…リディナと関係を持っていた。」



…!



どくん、と胸が鳴った。


やっぱり…写真の二人は恋人同士だったんだ。



クロウは静かに続ける。



「俺達は、お互いダメだと知りながらも、周りに隠して文通を交わし、密会をした。

…俺は、自分でも馬鹿だと思う程リディナに溺れてたんだ。」



小さな息遣いが耳に届く。



「そんなある日、城にやって来た情報屋が、ノクトラームが攻めてくるとの情報を王に伝えたんだ。

小さなこの国に動揺が広がり、当然、領土を守るために戦の準備が始まった。」



ノクトラームと戦を…?


クロウは、薔薇色の瞳を揺らして続ける。



「ノクトラームの騎士団は当時から強いと名が知れ渡っていて、生きて帰ってこれる確率はゼロに等しい。

そんな戦いに行く日の前日、リディナは俺を止めた。二人で逃げようと…そう言った」







「まさか、それがあの手紙…?」



「…そうだ。」



私の問いに、クロウは短く答えた。



…二人は、駆け落ちするつもりだったんだ。


一体、どんな気持ちで…。



クロウは、低い声で言った。



「…俺は、リディナを待った。

だが、あの夜俺の前に現れたのは、リディナではなかったんだ。」