数分浄化を続けると、クロウのネックレスの光は、ふっ、と消え、彼の痛みも落ち着いたようだ。
クロウはゆっくりと体を起こすと、私を見つめながら口を開く。
「…どうして俺を助けた。
俺はお前の敵だぞ。仲間も殺そうとした。」
その言葉に、ラントはぐっ、と眉を寄せる。
私は、クロウを見つめ返して答えた。
「私は、私の力が役に立つなら誰だって助けるわ。
私を逃したせいで負った傷なら、なおさら」
「…!」
目を見開くクロウに、私は続ける。
「もちろん、許したわけじゃないわ。同情しているつもりもない。
ただ…、私も貴方に悪いことをしたから、そのお詫びよ。」
「“悪いこと”…?」
眉をひそめ、意味を理解していない様子のクロウに、私は言った。
「リディナって、この城のお姫様の名前なの?」
「!…なぜそれを…」
「さっき、貴方に送られたリディナ姫の手紙を読んでしまったの。
写真と一緒にね。」
すると、一瞬クロウの顔付きが変わった。
珍しくひどく動揺した様子を見せる。
「…ごめんなさい。人のプライバシーを勝手に見てしまって…。」
私の言葉に、クロウは私から顔を背けた。
小さく呼吸をするクロウに、私は尋ねる。
「クロウは、元々この城の騎士だったの…?
この城で、一体何があったの?」
再び、部屋に沈黙が流れた。
…答えてくれは…しないよね。
私が視線を落とした、その時。
クロウが、小さく口を開いた。
「…そうだ。
俺は三十年前までこの城の騎士長だった。」
「「!」」
私とラントが目を見開いた。
窓が、風に吹かれてガタガタと震えている。
クロウは、私たちへとゆっくりと視線を移して話を始めた。
「それは、俺が二十歳の時の話だ。
俺はジャナルと出会い、そして奴の罠にまんまと かかって時を止められた。」



