父さんはゆっくりと微笑んで、私の前に手を差し出した。


「……え?」


意味が分からず首を傾げる。
だけど、微笑んだまま父さんは口を開かない。


「……」

戸惑いながらも、私もそっと手を伸ばそうとする。


――だけど。


「結月」


突然聞こえた声にハッと目の前を見ると、立っていたのはお母さん。


「っ……」

寂しそうに微笑んだその表情に、私はフッと思い出す。


そうだ……この人は、この男はっ!


「触らないでっ!」


私は眉を寄せ強く言い放つと、立ち上がってお母さんの元へと駆け寄った。


「大丈夫……?」

心配そうに私の頭を撫でるお母さんに頷く。


大丈夫。私は全然大丈夫。
それよりも……。


「平気そうに見えるけど、かなり泣いてたよ」


……え?


また突然聞こえてきた声に振り返る。


するとそこに立っていたのは、小さな男の子。

年齢にして4、5歳くらい。


悲しそうな顔をして私を見る、その男の子は――……。