「いただきます」と両手を合わせ、私は綺麗な玉子焼きを箸で摘んで口へと運ぶ。
優しい甘さが広がって、どこか懐かしい。
昔はお母さんがお弁当を作ってくれるのが、嬉しかったなぁ……。
なんて思いながら、ゆっくりと箸を進めていると、
「篁くん、おかえり」
瀬良さんの声と、フッと暗く影になった手元。
顔を上げると、昼食前にトイレに行ってくると言って離れた篁くんが、戻ってきていた。
そしてそのまま、私の真ん前の席へと腰掛ける。
空いていた場所が、そこだったから仕方ない。
だけど、篁くんと向き合ってご飯を食べるとか、ちょっとした生き地獄。
私は敢えて顔を見ないように、食べることに集中する。
「篁も弁当持参かよー」
少し羨ましがるような、そんな男子の声が聞こえて。
「あぁ……お節介なひとが、どうしてもって渡すから」
素直に答える篁くんの声が、嫌でも聞こえてくる。
お弁当を渡してくれる、お節介なひと。
それはどうせ、取り巻きの女子のひとり。
相変わらずおモテになることで……と、イラッとして、手に持った箸にギュッと力をこめたときだった。



