聞きたくなかった名前に、無意識に返事する声が低くなる。
すると、目の前の影山くんはフハッと吹き出した。
「笑わないでよ……」
「ごめんごめん。嫌なら嫌ってはっきり言えばいいのに」
「それはそう、なんだけど……」
私は言葉を詰まらせる。
嫌だと伝えることは、それほど難しいことじゃない。だけど、それが出来ないのは……。
「ありさが悪く言われるの、嫌だから……」
ぽつり、小さく呟いた。
私だって最初は、何も考えずに「もうやめて!」と、篁くんを睨みつけて言おうとした。
だけど、そんな私の腕を引いて彼は……。
『いいけど、そうしたら誰が困ることになるか……わかってんの?』
ありさの方を見ながら、耳元でそう囁いた。
詳しく聞かなくても何が言いたいのか、それだけで充分伝わる。
篁くんと幼なじみだというそれだけで、周りから妬まれていたありさ。
今は私がその位置にいるけれど、篁くんが私から離れれば、またありさが妬まれる。
しかも篁くんの言い方は、そうなるように行動するけどいいの?と、脅しているようだった。
そんなの絶対に嫌。
……だから。



