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「ありがとうございました」

「いえいえ。また遊びにおいで」


車を降りて、見えなくなるまで見送ってから、私は玄関の鍵をガチャンと開けた。

ドアを開けて広がるのは、真っ暗な世界。

人の気配なんて全くしない。


2、3歩ほど進んでから、壁に手を当てパチっと電気を点ける。

下を向けば、私の靴しかない。


今日もまた飽きずに女のところか……。


もはや普通のことすぎてため息も出ず、私は誰に言うわけでもない「ただいま」を呟いて、家の中に上がった。


真っ直ぐ進んで行ったリビングも、朝私が出て行った時から何も変わっていない。

床に落とすようにカバンを下ろして、ソファに倒れこむように腰掛けた。


チッ、チッ、と時計の秒針だけが響く家の中。


ありさの家は大好きだけど、温かすぎて帰った時に寂しくなる。

そして今日は更に……。