私は目の前の彼を睨みつけて言うと、突き飛ばすように掴んだ袖を離した。


「ふーん……」

目を伏せた私の耳に、篁くんの声が届く。

……と思ったら、視界の中に彼の皮靴が入ってきて。


「っ……!?」

私の目線が急に上がる。

目の前には、篁くんの顔。

気付けば私の顎を持ち上げて、今日のお昼と同じ……冷めた目で私を見ていた。

そして、


「俺も別にあんたが可哀想とか思わない」

「な……」


間近で向けられたその言葉に、息を飲む。


可哀想だと思わない……?


「わ、私は同情して欲しいなんて言ってない!」


ドンッと、今度こそ本当に彼を突き飛ばすと、その瞬間ガチャッと後ろでドアが開く音が聞こえて。


「ゆづちゃん、お待たせ。……あれ?蒼空くんとお話の途中だったかな?」

「あっ、いえ……いいんです!」


車の鍵を持って出てきたありさのお父さんに、私は少し強く言って、彼に背を向けた。