「ゆづちゃん、送っていくから家の前で待ってて」

「あ、はい。ありがとうございます」


デザートにありさのお父さんが買ってきたタルトまでいただいてから、私はやっと食卓の椅子から腰を上げた。

夕食をご馳走になった日は、いつも車で家まで送ってくれる。

遠慮して断ったところで「暗いし心配だから」と言ってくれるのは分かっていて、私は素直にお言葉に甘えることにした。


「あ、蒼空くん待って。これお父さんに」

同じタイミングで家を出ようとしていた篁くんを、ありさのお母さんが呼び止める。

ふと見ると、お弁当箱よりも少し大きなタッパーを渡していた。


たぶん、きっと今日の料理。

食器を下げていたとき、キッチンでちらっと見えたから、中身は容易に想像出来た。


「わざわざすみません」

それを受け取って軽く頭を下げる篁くん。


何だか少し胸の奥がチクっと痛むような気がして、私は洗い物を片付けるありさに「また明日ね」と挨拶すると、家を出た……のに。