「さっき言おうとしてたことなんだけど……蒼空、お母さんいないんだ」

「え……?」

「あたし達が中学2年生の頃にね、交通事故で……」

「……」


思いもしない彼の事情に、言葉を失う。
何と言ったらいいのか、わからない。


ただ、ありさのお母さんが『心配して』という意味は理解出来た。

だけど、あれは?

今日のお昼、私に言った言葉の意味は……?


戸惑いながらありさを見ると、


「交通事故で亡くなっただけじゃないんだ。その日、蒼空のお母さん出て行ったの。他に好きな人が出来たって……それで……」


「……え」


言いにくそうに言葉を濁したありさに、私は更に戸惑う。

ごくんと唾を飲み込む。


それって、つまり――。


抱いていた疑問が解けた瞬間、

コンコン。

軽くドアをノックする音が聞こえて振り向くと、


「余計なこと言うなよ」


ドアを開け、いかにも不愉快といった顔を見せたのは、篁くんだった。