***


「まさか……だったね」

2階にあるありさの部屋。

パタンと静かにドアを閉めると、私はやっと息を深く吐いた。


「うちの母さんがごめんね」

申し訳ないといった顔をして、謝るありさに首を横に振る。


「幼なじみなんだし、仕方ないよ」

それに、ありさのお母さんはとても優しい人だから。

篁くんに会ってしまったからには、誘わずにはいられなかったんだと思う。

まぁ、それは仕方ないとして……。


「誘われて素直に来るんだね」


ちょっと意外だった。

教室の中での彼の雰囲気を思い出せば、来ないこともないと思うけど、私の中に浸みついた印象は今日の昼の……あの態度。


ありさは「あぁ……」と、小さく相槌を打った後、


「蒼空のこと心配して、母さん色々してるから。無碍には出来ないんだよ」


どこか寂しそうに目を細めて、そう呟いた。


「心配?」

……って、何を?


考えてみれば、女性関係とか確かに心配すべきところはあるけれど、『色々してる』という言葉には結びつかない。

私が首を傾げ問いかけると、ありさは口を開いた。