「ああ、さっき家の前で偶然会ってね。蒼空くんも誘ってみたの」
「ゆづちゃん紅茶で良かったかな?」と言いながら、キッチンへと進むありさのお母さん。
「そう、だったんだ……」
ありさは戸惑った様子で返事をしつつ、ちらりとこっちに目を向けた。
最悪……。
思いもしなかった展開に、言葉も出ない。
対する篁くんはと言うと、一度こっちを見たけれど、何もなかったようにフイッと視線を戻した。
そして、まるで自分の家のように我が物顔でテレビを見ている。
「あ、あの私……」
無理だ。
篁くんも一緒なんて、絶対無理!
悪いけど、今日は帰らせてもらおう。
そう思って、くるりとキッチンの方へと向き直し、ありさのお母さんに用事が出来たと言い訳をしようとした。
だけど、
「ほら、ありさもゆづちゃんも座って座って」
お盆に可愛らしいティーポットとカップを乗せ、笑顔で促すありさのお母さん。
「……」
そんな嬉しそうな顔をされたら、『帰ります』だなんてとても言えなくなる。
結局私は言われるがまま、ソファに腰を下ろした。