「……え」

私は目の前の光景に、目を真ん丸にする。



住宅地にある、可愛らしい佇まいの一軒家。

ありさが家のドアを開けると、「おかえりー!」という声と一緒に、甘い匂いが私達を迎えてくれた。


「いらっしゃい!今ね、ちょうどケーキが焼きあがったところだったの」

水色のストライプのエプロンをして、にっこりと満面の笑顔で玄関まで出てきてくれたのは、ありさのお母さん。


「お邪魔します」と軽く挨拶をして、私は用意されたスリッパを履いて、家の中に上がらせてもらった。

そして、「また同じクラスで良かったね」なんてちょっとした会話をしながら、通されたリビング。


そこにいた人の姿を見て……私は固まった。

だって――。



「……え、何で蒼空が?」


私が思ったことを、口に出してくれたのはありさ。


そう……リビングにあるテレビの前のソファ。

そこに座っていたのは、他の誰でもない篁くんだった。