「……そっか。蒼空、そんなことゆづに言ったんだ……」
ぽつり、呟くように言ったありさ。
その発言に私は「え?」と、ありさの方を見る。
だってその言い方だと、何か納得したみたいに聞こえる……。
「ありさ、何か知ってるの……?」
私が問いかけると、ありさは少し考えるように黙り込んで。
「後からゆっくり話すね」
躊躇いがちに微笑んだ。
本当はすぐにでも聞き出してしまいたい。
だけど、ありさの言う通り、『後からゆっくり』でも別にいいかと思った。
何故なら今日は、ありさのお宅へお邪魔することになっていたから。
始業式の日、一緒に夕飯をとのお誘いを断ってしまったわけだけど、ありさの両親は改めて誘ってきてくれた。
初めてお邪魔させてもらったときから、本当に良くしてくれる。
うちの事情を少なからず知っているから、誕生日とかクリスマスとか行事のあるときは、必ずと言っていいくらい声をかけてきてくれて。
温かいありさの家の雰囲気が大好きで、ありさのお母さんの料理はいつも楽しみ。
だから、せっかく楽しいことが待っているんだから、余計な話は後からでいいか……って、そう思った。
――なのに。