私は無視して過ぎ去ろうとしたのに、彼が腕を掴んでふざけたことを言うから……。
「思いっきり、引っ叩いちゃったんだけど……」
全ての元凶はあれ。
あの出来事があったから、目をつけられてしまったんだ。
「ゆづらしいね」と、苦笑するありさ。そして、
「ゆづは蒼空と付き合う気はないんでしょう?」
「はぁ!?」
とんでもないことを言うから、つい声が大きくなった。
「あるわけないじゃん! 絶対やだし、あんな奴っ!」
例え、付き合わなければ世界が滅ぶと言われても、頑としてお断りさせていただく。
それくらい、あり得ない。
「ありさまでとんでもないこと言うのやめてよ……」
溶けるようにテーブルの上にうな垂れる。
そこにちょうど注文していたランチを店員さんが運んできて、私はすぐに体を起こした。
……あ、しまった。
昨日もハンバーグ食べたのに。
テーブルの上に並べられる料理を前に、そんなことを思う私。
「そんなに悪い人ではないんだけどね……」
小さく呟いたありさの声は、聞こえなかった。



