騒がしかった教室内が、突然しんと静まる。
何事かと私もありさも顔を上げれば、ひとりの男子がこっちに向かって歩いてきていた。
その男子は……篁くん。
きっとまたありさに用事だろう。
私はもちろん、クラスのみんながそう思ったと思う。
……だけど。
「高宮 結月」
彼が足を止めたのは、私の真ん前。
至近距離で名前を呼ばれ、顔を上げる。
わ、私……?
「あんた、俺のこと引っ叩いたでしょ」
「っ……!」
覚えてたんだ。
あまりの気まずさに、一歩後ずさると背中が壁にぶつかった。
「え、えっと……」
何て返せば、これ以上関わらずに済むだろう。
潔く叩いたことを謝った方がいい?
それとも、知らないふりで突き通す?
思わず目を逸らして、再び彼を見る。
すると、怒っているのか何なのかわからない表情で、私をじっと見ていた。
そして、彼は突然私に手を伸ばして……
「あんた、俺と付き合わない?」
顎をクイッと持ち上げた。



