「いいひと……?」

目をパチパチと瞬かせるお母さんに、こくりと頷く。

すると、お母さんはあはっと笑って。


「残念ながら、そんなのはぜーんぜん」


フォークをお皿の上に置いて、ぶんぶんと手を振った。


私がお父さんを選んだ、もうひとつの理由。

それは……お母さんには幸せになって欲しいから。


私がいたら、子どもがいたら、きっと新しい恋愛なんて出来ない。

だから私は、お父さんを選んだ。

全部、大好きなお母さんのため。


……それなのに。


「そっか……」

いい人がいないと聞いて、安心してる自分もいる。

幸せを願う気持ちは本当なのに。


「お母さんより、結月の方こそどうなの?」

「え?」

「彼氏とかつくらないの?」


にんまりと笑って見つめるお母さんに、今度は私が目をパチパチと瞬かせた。


彼氏……?


「……そんなの、いらない」


ナイフとフォークを握る手に、ぎゅっと力が入る。


彼氏なんていらない。
男なんて大嫌い。


「私は、恋なんかしない」