フッと暗くなった目の前。
目を閉じた蒼空くんの長いまつ毛が、もうすぐそこにあって……。


目を閉じる余裕もなかった。

──唇に柔らかいものが、触れた。


「……」

ポカンとする私に、蒼空くんは満足そうな顔をして、本を持って立ち上がる。


や、やられた……!!
よりによって学校でキスなんて……!!


思わぬ不意打ちに顔も身体も熱くなって、声も出せずにいると、


「教室、帰ろう」


蒼空くんは微笑んで、私に手のひらを差し出した。


「……うん」

ずるいなんて思いながらも、何だかんだでその手を取ってしまう私。


大きくて温かくて……好き。


繋いだ手をぎゅっと握り返しながら、ふと思い出したのは、さっきの先生の発言。

そうだ……席替え……。


冷やかされてついあんなことを言ってしまったけれど、少しだけ後悔。

今の距離は近すぎて、困ることもあるけれど、離れてしまうのは正直寂しい。

でも……。