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「あ、おかえり」
教室に戻ると、ありさは自分の席について読書をしていた。
「先生どうだった?」
「うん、大丈夫って」
「そっか。良かったね」
広げていた文庫本にしおりを挟みながら、ありさも嬉しそうに笑う。
「何読んでたの?」
「ああ、うん、小説。蒼空が貸してくれたやつで……」
向けられた表紙を見てみれば、本屋さんでよく見かける今話題のものだった。
「面白い?」
「うん、面白いよ。ゆづも読んでみる?」
問いかけられて「うん」と、頷く。
ていうか、そういえば……。
「蒼空なら図書室に行ったよ」
「えっ!?」
一瞬教室を見渡しただけなのに、言い当てられてドキッとする。
そんな私を、クスクスとありさは笑って。
「まだ時間あるし、行ってみたら?」
「や、でも……」
「続き、いいところだったから読みたいし」
「っ……」
本を顔の横に掲げて、にっこり笑うありさ。
続きを読みたいとか、そんな言い方されたら……。



