裏切られて傷付けられて、それでもまだ父さんのことが好きなお母さんのこと……本当にバカだと思っていた。
だけど、今なら分かる。
優しくされて、嬉しいこと、幸せなことがあって。
沢山見つけた素敵なところから生まれた気持ちは、そう簡単にはなくならない。
私も……例え篁くんに裏切られたとしても、心の底から嫌いになるなんて、きっと出来ない。
篁くんの良いところ、それから今日のことを思い出して……やっぱり好きだと思ってしまうんだと思う。
「結月……」
篁くんが私の名前を呼んで、頰に触れる。
少しずつ近づく距離に、胸のドキドキが止まらない。
恋なんて……と、ずっと思っていた。
だけど、恋をして、篁くんを好きになって、気付いたことが沢山ある。
目を閉じて、そっと優しい感触が唇に触れる。
胸の奥からぎゅっとして、くすぐったくて、恥ずかしくて、身体に火がついたみたいに熱くて。
……こんな幸せな気持ち、知らなかった。