昨日、私は早退したからありさと一緒ではなかった。


「あれ……? じゃああの子、何してたのかしら。真っ直ぐ帰ってくれば、雨に降られなかったのに」

不思議そうな顔をして、腕組みした手を頰にあてるありさのお母さん。

雨の中、ありさが寄り道した心当たりはなく、私も首を傾げた……その時。


バタンッ!

と、二階から音がして、続けてバタバタと響いた足音。

何事かと私もありさのお母さんも、玄関先の階段を見上げると……


ピンク色のパジャマを着たありさが、大きく肩を上下させ立っていた。


「っ……」

私を見て、口を真一文字に結ぶと、


「ゆづ……!!」


階段を駆け下りてきたありさは、飛び付くように私に抱きついた。


「ごめん、ゆづ、ごめっ……」

「え……」

声を震わせながら、私に謝るありさ。

何をどうして謝っているのか、全く分からなくて戸惑っていると、


「ゆづちゃん、とりあえず上がってあげて」


私達を見ていたありさのお母さんが、苦笑しながらそう言った。