「お見舞いに来てくれたの? わざわざごめんね、ありがとう」

玄関のドアを開け、そう微笑んでくれたのは、ありさのお母さん。

ありさのお母さんが何かを知っているとは思わないけど、いつもと変わらない様子にホッとする。


「せっかく来てもらったんだけど、さっき部屋に覗きに行ったら寝ててね……。上がって少し待ってみる?」

「あっ、いえ、寝てるんだったら……」


「大丈夫です」と、慌てて首を横に振る。

だけど本当は、話をするつもりで心を決めてきたから、出鼻をくじかれ肩を落とす。


仕方ない。とりあえずありさの様子だけ聞いて帰ろう……と、

「あの、ありさは大丈夫ですか?」

そう尋ねてみると、


「うん、ただの風邪だから大丈夫。もう熱も下がってたし。そういえば、ゆづちゃんこそ大丈夫だった?」

「え?」

「昨日の夕方、雨が降ったでしょ? ありさ、それでびしょ濡れになって風邪ひいちゃったから。帰りが少し遅かったから、ゆづちゃんと一緒だと思ってたんだけど……」


「違った?」と、ありさのお母さんに問いかけられ、私はこくんと頷く。