「そういえばね、スーパーで面白いもの見つけたの」
そう言って、戻ってきたお母さんは、嬉しそうに私にひとつの缶を差し出した。
「……」
見覚えのあるパッケージ。
大きくポップに書かれた文字を見て、私はキョトンとした後に……笑った。
「ね、面白いでしょ?」
「うん。でもそれ、私飲んだことあるよ」
「えっ!?」
私の返事に、予想していなかったのか、驚いた顔をするお母さん。
確かに自分じゃ選びそうにもないそれは……飲むシュークリーム。
本当に偶然なんだけど、今この偶然は……ずるすぎる。
あの甘ったるい、だけど優しい味。
思い出したら無性に会いたくなった。
そして……伝えたい。
今、この気持ちを忘れないうちに。
「お母さん……」
缶を手に取った私は、呟くように口を開いた。
「ちょっと出てきてもいい……?」