いつの間にか、気付いたら好きになっていた。

だけど、言われて走馬灯のように思い出す……篁くんのこと。


迷子の子どもに優しくしていたり、飛び出した私を追いかけてきてくれたり、話を聞いてくれたり、心配してくれて……『頑張れ』って、励ましてくれたり。


私……そっか、一緒に過ごすうちに。

篁くんの良いところを沢山見つけたから、好きになっていたんだ……。


変なの、良いところなんかないと思っていたのに。

今思い出したら、良いところばかり浮かんでくる……。


「ね?」と、優しく問いかけてきたお母さんに、私は静かにこくりと頷いた。


どうして、よりによって何で篁くんを好きになっちゃったんだろう……って、ずっと悪い方向に思っていた。

だけど、人を好きになること、恋をすることは──……。



「あっ、そうだ!」

突然、何か思い出したようにお母さんが声を上げ、立ち上がる。

そしてそのまま、キッチンの方に向かうと、買い物袋の中からガサガサと何かを取り出した。