ゆっくりと、だけど何の躊躇いもなく告げるお母さん。
「それに、最終的にはこうなっちゃったけど、幸せなことだっていっぱいあった。……だから、今も嫌いになれないんだけど」
「……」
知ってる、お母さんが今も父さんを好きなこと。
苦笑するお母さんの姿に、想いを目の当たりにして、きゅっと切なくなっていると、
「結月、好きな人が出来たんでしょ?」
「へっ!?」
突然自分のことを指摘され、ドキッとした私は思わず声を上げた。
その反応に「やっぱり」と、お母さんは笑う。
「っ……」
このタイミングで、その質問はずるい。
墓穴を掘ってしまった私は恥ずかしくて、膝を抱える……けど。
「絶対、好きになんかならないと思ってた人で、ありさも……好きな人で……」
私ひとりじゃ抱えきれない。
そんな思いを吐き出すように呟くと、
「あらあら。それは初恋の結月には大変すぎるね」
お母さんはポンポンと、私の頭を撫でた。



