すき、きらい、恋わずらい。


「人の気持ちなんてどうなるか分かんないのに、結婚なんかして幸せになれるのかな……」


言いながら思ってる。

──なれるわけない、って。

だって、私の目の前の……お母さんがそう。


脳裏に焼き付いて離れない、あの日のお母さんの涙。

心の底から愛していて、ずっと信じていた人に裏切られて、幸せなはずがない。

だから──。


「うん、そうだね……。結婚してもどうなるか分からないよね」


ほら……。

お母さんの返事に、心の中で相づちを打つ。

だけど、


「でもお母さん……お父さんと結婚したこと、後悔はしてない」

「え……」


聞こえてきた言葉に耳を疑い、顔を向けると、


「だって、お父さんと結婚しなかったら、結月に会えなかったもの」


お母さんは優しく微笑んで、私に言った。


「今まで生きてきた中で、一番幸せだったのが結月が産まれたとき。すごく、言葉に出来ないくらい幸せで、結月をくれてありがとうって、あの人に思ったの。だから……あの気持ちを忘れたくないから、もし過去をやり直せたとしても、お母さんはお父さんを選ぶと思う」