「高宮」
ありさの気持ちも、私の状況も知らない篁くんが声をかけてきたのは、彼が教室に来てすぐだった。
「さっき何か言おうとしてただろ。あれ、何?」
自分の席に座ったまま、振り返った私に篁くんは尋ねる。
「あ、あれは……」
ちらりと周りに意識を向ければ、こっちを見ている女子達の視線。
確認する勇気はないけれど、ありさも……気にしているかもしれない。
「べつに、大した話じゃないから」
「は?」
篁くんの返事が返ってくる前に、私は前へと向き直す。だけど、
「たかみ……」
ガタンッ!
もう一度、篁くんが私を呼ぶ声が聞こえてきて。
焦った私は慌てて立ち上がり、席を離れた。
上手くやり過ごせたなんて思わない。
私だって、少しあからさますぎると思う。
でも、ありさが不安に思っている以上、篁くんには近付けない。
篁くんを避けることしか、良い手立てが浮かばない。
……それなのに。



