すき、きらい、恋わずらい。



「本当にすまない、結月……」


さっきよりも深く……深く、頭を下げる父さん。

本当はこんな姿、見たくなかった。

父さんの背中はいつも大きくて、優しくて、頼もしくて、憧れで、大好きだった。

それなのに……。


「っ……」

泣かないって決めていたのに、表情が崩れかける。

だめ……まだダメ。


私は静かに立ち上がり、父さんの方へと歩み寄る。そして、


「一回だけ、叩かせてください」


椅子に座ったまま私を見上げる父さんは、当然のように驚いた顔をする。

だけど、すぐに「あぁ」と返事して、目を閉じた。


「大嫌い……」


本当に、心の底から、大嫌い。

こんな結末になるのなら、初めから最低な父親でいてくれたら良かったのに。


幼い頃、仕事から家に戻ると真っ先に私を抱きしめてくれた。

休みの日は、動物園や遊園地、色んなところに連れて行ってくれた。

大好きだった父さんの記憶が……私の胸を締め付ける。


「っ……」

涙を堪え、私は手を宙に振り上げる。


これで、もう最後。

私と……お母さんの気持ちも込めて。


──パシンッ!


遠慮なんてしなかった。
家中に響くくらい、私は思いっきり父さんの頰を引っ叩いた。


「最低っ……」


赤くなった父さんの頰が滲んで見える。

私の目からは、涙がこぼれ落ちた。