こうしてこのテーブルに顔を合わせて座るのは、いつぶりだろう。

この家の主人(あるじ)のはずなのに、目の前の人は全く景色と溶け込んでなくて、何だか笑えてくる。

もちろん、本当に笑ったりなんてしないけど。


「月乃から聞いたよ。一緒に住むことにしたって」


テレビもついていない静かな部屋に、父さんの声が響く。


「色々とすまない。その……多感な時なのに」

「っ……」


そう言って小さく頭を下げる父さんに、私は膝の上で握り拳をつくる。


分かっているならどうして、あの女(ひと)と別れないの。


言いたいのに、言えない。

ただ込み上げてくる怒りと悔しさに、きゅっと下唇を噛む。


いかにも申し訳なさそうな顔をしているけれど、本当はホッとしてるんでしょう?

私がお母さんと暮らすことになって、やっと自由になれるって、喜んでいるくせに。


「私は……」

喉の奥から声を絞り出す。


一方的に謝られて、私はお母さんに引き取られて。それで終わりになんて、させない。

……そう思うのに、言葉が上手く続かない。